生野ルートダルジャン芸術祭
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生きた時間(2020)

この生野のという土地に私は、多様な時間の露出を感じる。それは人間の一世代のスパンであり、歴史的スパンであり、地球のスパンであり、宇宙のスパンである。あらゆる時間がこの谷に凝縮されている。購買會の横を流れる市川は今も豊かな水量を湛えている。人類が時間という概念を作りだして以来、人間が作った「時計」という時間を示す道具と、人間が時の比喩として使う「川の流れ」とのポリフォニックな演奏をここで聞いてみたかった。

芸術祭が行われるのはかつて生野鉱山のあった生野町である。1200年もの間人々はここで銀をはじめ銅や錫を採掘し続けた。特に江戸時代は幕府の管理のもと、経済を支える銀の採掘がピークを迎える。明治29年に三菱合資会社に払い下げられて以降、77年間にわたって採掘が続けられたが、資源減少により昭和48年(1973年)に閉山となる。閉山まで、炭鉱労働者にあらゆる生活物資を供給してきたいわゆるスーパーマーケットが購買會である。

かつての坑道は、現在ミュージアムとして公開されており、鉱物採掘の様子が人形などを配置して説明されている。薄暗い坑道の削り取られたノミの跡も生々しい地肌は、地球の露出であり、その地球を形作る鉱物は、かつて宇宙を漂っていた浮遊物だった。

​空の穴(2016)

銀を採取した残り滓のからみ石、この部屋の壁2面はからみ石でできている。薄暗い部屋の隙間から入る光を鏡を使って集める。鏡は可視光線反射率が金属中最大の銀をガラスの裏打ちとして使っている。人間の手により分離された銀とからみ石がこの空間で再会する。

​滑川みざ/なめかわみさ/MisaNamekawa