MOMENT
モーメント
モーメントは、刹那を表現した作品で、写真とビデオと張り巡らした赤い糸からなるアートインスタレーションです。場所は大阪のスペース草で、初日のパフォーマンスで、張り巡らせた糸を一本一本滑川が切っていきました。会期の二日目からは、滑川がその糸を一本一本結んでいきました。そして最終日に再びその糸を切断するパフォーマンスを行いました。
壁面の写真はほとんどが2018年夏にアートプロジェクトで訪れたデンマークと神戸の空の写真です。デンマークの田舎の空はどこまでも広く、一瞬たりとも同じではない美しさに触発されてシャッターを押し続けました。帰国後、ふと見上げた神戸の空はビルで区切られ、気候や環境条件のためにデンマークと同じではないですが、それでもそこに空はあり、それはデンマークにもつながっています。ビデオはこの夏のデンマークに行く道中からデンマーク滞在中、そしてその岐路に撮影したものです。主に牧草地や麦畑、草原を吹き抜ける風とフィヨルドや西海岸の海の波、そして移動中の車内からの撮影で構成され、どれも刹那と永遠を感じた光景です。インスタレーションでは、このビデオの役割は音源と光源にあります。特に音は、最初はあまり意識に上りませんが、インスタレーションスペースにしばらくいると、やがて風の音や波の音に気付く人が多くいました。吊るされたり、置かれた鏡は赤い糸や映像の限られた部分を映しています。赤い糸は、日本では例えば男女の縁を結ぶものとして象徴的な意味を持たされています。瞬間を人と共有するパフォーマンスとして糸を切りましたが、この糸はまた結ばれます。しかし結ばれた糸は決して元通りではなく様子を変えています。そして再び糸は切られ、また結ばれます。この繰り返しが私たちの人生という営みだと、滑川は考えています。
インスタレーションの中で流したビデオ